「困ったことはありますか?」という質問について
地域医療の外来において、慢性疾患が落ち着いている患者さんに対して
困ったことはありますか?気になることはありますか?
とつい聞いてしまうことがあります。
こういう時、医療者は自分が気づいていない患者さんの困り事を知りたくてこのような質問をしてしまうと認識しています。
一見、診療だけでなく患者さんを全人的にみるという姿勢が現れているようにとらえることもできますが、実は聞かれた方は何を答えていいか返答に困ることが多い質問でもあります。
私たちも、研修医の頃に、上級医に研修でなにか困ったことはあるか?と聞かれても本当のことを言っていいものか迷うこともあるし、そもそも困ったことが思い浮かばず返答に困ってしまうことを経験したことはないでしょうか?
困ったことはあるか?気になることはあるか?という質問は、実は相手に何を話すかを考えてもらう聞き方であるため、医療者に対する忖度の内容が含まれたり、その場しのぎで内容が事実と結びついていなかったり、逆に実際に困っていなことが大袈裟に表現されてしまう可能性があります。
私たち医療者が本当に聞きたいような、私たちが気づかない患者さんが感じている困りごとはこの聞き方では返ってこないことが多いのです。
ではどうやって患者さんの困り事を聞くかというと、実は具体的にひとつずつ患者さんが困っていそうなことや、患者さんの生活状況を聞いていくしか近道はないと思っています。
地域医療の経験が長くなると、患者さんがどのような困りごとを抱えていることが多いか、診療の最後にどんなことが、言えないか、聞けないかといった経験を積むことができるので、経験を積むにつれ、具体的に〜〜してないですか?〜〜は聞きましたか?と聞くことができるようになってきます。
この経験というものは体系的に学ぶことがなかなか難しく、患者さんとの外来診療を繰り返していくことと、患者さんの生活状況や、暮らしに関するエピソードの一定以上の集積が必要です。
診察室で診療と関係ない事を聞くことは、あまり好ましいものと捉えられないこともありますが、私たちが気づかないような患者さんのニーズ、困り事を拾い上げることにつながることもあるのでぜひ外来に余裕がある時にでも患者さんの生活に耳を傾けることを試してみていただければと思います。



コメント