Mの話は長いが軽い 第四回 総合診療・家庭医療の専門性のこと その②前提、言葉の問題

エッセイ

 では、そろそろ本番のお話しに入る。が、いきなり始めると素直に総合診療の道を選んで、その専門性に疑問を持たない方にとってみれば、何事が起こっているか理解できないでしょうから、少しその前提に触れたい。プライマリ・ケアあるいは地域医療で医師がすることは、年代や疾患や性別にとらわれず、それこそ総合的に継続的に診療をすることが基本で、このために多様で広範囲な知識や技術が求められます。そう、これで良い。いや、これで何ら問題がない、よね。しかし、私にとっての問題だったのは、“そういったことは誰でもできるし、専門性があるとは言えないね”、と各科専門の先生から指摘され、へき地で一所懸命やってはいるものの何故か満たされない思いが続いていたことでした。

 我が心の師McWhinney先生は家庭医療のテクストの中で、家庭医療の基本原理を述べる際、“その人がどういう人であるかはその人が何をやっているかを見ればわかる”と言っている。これに倣えば、総合診療医/家庭医は総合的に診療する人と言えるのだが、これはtautology(堂々巡り)だと師も述べているくらいだから、これでは何も言ったことにならないよね。そこで我が師は家庭医のとるべき視点や態度を9つの原理にまとめたのでした、すばらしい(みんな読んでね。第二章だからね)。しかし師に反論するのではないのだけれど、この基本原理は家庭医が何をやっているかを分析しその理想を述べたものではありますが、専門という言葉には届いていないように思います。そう、専門という言葉の原義に戻る必要があるのだと、師の視線を感じつつ(会ったことはありません。念のため)、考えました。

 “専門”という言葉。外科医の専門性はとてもわかりやすいので、これを元にしてお話ししを進める。外科医の専門性を保証するのは、手術という方法があることであって、手術を常時行わない外科医はどう考えても外科医ではない、手術するからこそ外科医なのであるが、この言い方だと例のtautologyになってしまうので、“専門”の言葉に指向性を持たせることにする。つまり目的と時間を与える。当然疾病の除去がその目的となるので、外科医の専門性を次のように表せる。外科医は1)疾病の除去という目的のために2)手術という方法を3)日常的に行うものである。これをさらに一般化すると、ある職業の専門性は1)ある目的があり2)それに適した方法を3)継続していることである、となる。では、内科や精神科ではどうだろう。ちなみに消防士は、火事の鎮圧のために、(主に)消防車を使う人であって、日常的に行なっていますね。手段や方法が実にその中心になっています、当たり前だけど。そう、ここです。ここで総合診療/家庭医療の専門性の欠落を指摘されるのです。下に一覧表を示します。家庭医療の欄をどう埋めたかは。また次回。乞うご期待!

 外科循環器内科精神科家庭医療消防
目的疾病の除去疾病の除去疾病の安定 火事の鎮圧
方法(代表)手術カテーテル精神療法 消防車
時間日常日常日常 日常

やっとここまで来たか〜 本当に長いな・・・

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